・ちょうちょうの歌詞の意味
・昔の歌詞と幻の2.3.4番
・ちょうちょうの曲は世界的
ちょうちょうの歌詞の意味を解説
◉ちょうちょうの歌詞
ちょうちょう なのはにとまれ
なのはにあいたら 桜にとまれ
桜の花の 花から花へ
とまれよ遊べ 遊べよとまれ
ちょうちょうの歌詞の中で意味がわからないと思われる部分は「あいたら」と「なのは」ではないでしょうか。
ここではこの2点について詳しく解説します。
あいたらの意味は飽きたら
「あいたら」は漢字で「飽いたら」と表記し、飽きたらという意味です。
つまり「なのはに止まるのに飽きたら、桜に止まって遊びなさい」と歌っています。



あいたらは昔はよく使われていた
「飽きる」には元々「飽く」という表現もありました。意味は同じです。
「飽く」はカ行四段活用の動詞で、「飽いたら」はこの「飽く」の連用形が使われています。
昔は西日本では「飽く」、東日本では「飽きる」が主流であり、この歌では「飽く」が使われたのです。
動詞 | 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 仮定形 | 命令形 |
飽く | か | き い |
く | く | け | け |
四段活用なら「飽きたら」となりそうなところですが、話し言葉として「飽いたら」が言いやすいため、イ音便形になります。
現在もこの表現を使う地域もあるようですが、聞き慣れない人が多いでしょう。
なのはは菜っ葉




そうね。でも食べる以外にも止まる理由があるのよ。
「なのは」とは菜っ葉、つまり葉の部分を食用とする野菜のことです。
身近なもので言うとキャベツ、ほうれん草、小松菜などがあり、この歌詞ではキャベツをイメージしていると言われています。
蝶は花には蜜を吸うために止まりますが、菜っ葉には産卵のために止まります。
中でもモンシロチョウは産卵のためにキャベツに止まり、一度に1つの卵を産むため、頻繁に行ったり来たりするのです。
昔は違ったちょうちょうの歌詞
ちょうちょうの歌詞は1947年(昭和22年)に改作されています。
現在の歌詞の中の一部が違い、さらに2.3.4番がありました。
元の歌詞と今の歌詞になった理由
ちょうちょうの改作前の歌詞は「花から花へ」の部分が「栄ゆる御代に」でした。
改作された時の日本は太平洋戦争終結後で、GHQにより皇室賛美の排除が主張されていました。
栄ゆる御代にという歌詞はその主張の反するという理由から、1974年に現在の歌詞に変更されました。
●元は岡崎のわらべうた
ちょうちょうの歌詞は愛知県岡崎市のわらべうたが元になっていると言われています。
作詞者の野村秋足は愛知県で教員をしている時に、わらべうたを集めるように命じられ、その時に岡崎のわらべうたに出会いました。
ちょうちょうの歌詞とよく似ているため、作詞の参考にしたと言われているのです。
◉岡崎のわらべうたの歌詞
蝶々とまれ、 菜の葉にとまれ、菜の葉がいやなら手にとまれ
2.3.4番の歌詞と削除の理由
ちょうちょうには234番がありました。2番以降にはスズメ、トンボ、ツバメが出てきます。
題名とは関係ない虫や鳥が登場するのはおかしいという理由で、1番の歌詞改作時に削除されました。
◉234番の歌詞
2(稲垣千頴作詞)
おきよ おきよ ねぐらの雀
朝日の光の さきこぬさきに
ねぐらをいでて 梢にとまり
あそべよ雀 うたへよ雀
3(1896年追加・作詞者不明)
蜻蛉(とんぼ) 蜻蛉 こちきて止まれ
垣根の秋草 いまこそ盛り
さかりの萩に 羽うち休め
止まれや止まれ 休めや休め
4(三番に同じ)
燕(つばめ) 燕 飛びこよ燕
古巣を忘れず 今年もここに
かへりし心 なつかし嬉し
とびこよ燕 かへれや燕
ちょうちょうの曲はグローバル
・原曲はドイツの童謡
・アメリカの童謡でもある
・スペイン民謡は間違い
原曲はドイツの童謡
ちょうちょうの原曲はドイツの童謡「幼いハンスちゃん(Hänschen klein)」です。
この歌は子どもに別れ・出発・悲しみからの回復を教えるために作られました。日本のちょうちょうとは全く違う歌詞の内容です。
●幼いハンスちゃん 歌詞の内容
1 幼いハンスちゃんが旅に出て、お母さんは涙しながら見送った。
2 ハンスちゃんは7年の長旅の末日焼けした大人の「ハンス」に変わった。
3 大きくなったハンスは故郷に帰ったが、あまりの変わりように誰にもわかってもらえなかった。しかし、母親だけはすぐにわかってくれた。
ドイツ→アメリカ→日本へ伝わった
ちょうちょうの曲はドイツからアメリカに伝わり、その後日本に伝えられました。
アメリカでは「Lightly Row」というボートを漕ぐ様子を歌う童謡として広く親しまれています。
日本には、音楽教育を学ぶためアメリカに留学していた伊沢修二が日本にこの曲を伝えました。
その後、伊沢修二に命じられて、わらべうたの収集をしていた野村秋足がこの曲にちょうちょうの歌詞をつけたのです。

原曲=スペイン民謡は間違い
アメリカから日本に伝えられたこの歌の原曲はスペイン民謡と紹介されていましたが、それは間違いです。
この曲をアメリカから伝えた伊沢修二が誤って「原曲はスペイン民謡」と紹介したのです。
それについて最近まで誰も疑うことがありませんでした。
そのため、この歌の原曲について調べると現在でも多くの本や記事などで「スペイン民謡」と記載されています。正しくはドイツの童謡です。
なのはにあいたら=菜っ葉に飽きたら
「菜っ葉に止まることに飽きたら桜に止まって遊びなさい」という意味
●歌詞は1947年に改作、234番が削除された。
●原曲はドイツの童謡で、ドイツ→アメリカ→日本の順に伝えられた。
●最近までスペイン民謡が原曲という誤った内容で紹介されていた。
多くの人に親しまれるこの歌には日本の昔の言葉使いが使われています。
こどもが日本の昔の言葉に興味を持つ良いきっかけになるかもしれません。
メロディーは海外でも親しまれている世界で通用する曲です。国際交流の機会に話題にするのも良いでしょう。