•たなばたさまの歌詞の意味
•人を惹きつける歌詞の秘密
•たなばたさまの由来
•七夕にまつわる疑問を解決
これらは七夕を表すキーワードなんです。
たなばたさまの歌詞の意味
•たなばたさまの歌詞
•難しい言葉の意味
•歌詞全体の意味
たなばたさまの歌詞
ささの葉さらさら
のきばにゆれる
お星さまきらきら
きんぎんすなご
ごしきのたんざく
わたしがかいた
お星さまきらきら
空からみてる
(作詞:権藤はなよ 作曲:下総皖一)

のきば
●のきば(軒端)
屋根の端、壁から張り出した部分、またはそのあたりの空間
軒とは屋根の外壁より外に出た部分のことを言い、軒端はその端っこのこと。
【屋根の端っこあたりの空間】を指すこともあり、この歌ではそれに当たります。
昔はこの軒端に七夕の笹飾りが飾られていました。
この歌では軒端で夜風に吹かれて笹飾りが揺れている情景を歌っています。
きんぎんすなご
●きんぎんすなご(金銀砂子)
金箔•銀箔を砂のように細かく砕いた粉
このきらきらする粉は蒔絵、襖絵の装飾に使われています。
この歌では七夕の夜のたくさんの星が、金銀砂子のようだと歌っています。
ごしきのたんざく
●ごしきのたんざく(五色の短冊)
七夕の願い事を書く5色(緑、赤、黄、白、黒)の短冊
※黒=日本では縁起が悪い色なので紫を使う
緑=青の場合もある
この5色は五行説に基づいた色です。
●五行説とは
万物は木(緑)・火(赤)•土(黄)•金(白)•水(黒)の5種類の元素からなるという自然哲学の思想。

五行説をわかりやすく
●五行説
この世の全てのものは「木・火・土・金・水」の5種類の元素からできているという考え方
全てのものはお互いに関係し合い、じゃんけんのように勝てるもの、勝てないものが存在します。
何かが多すぎると何かが少なくなってしまう。
そのため、それぞれ適度な量を保っています。
この世のものは絶妙なバランスで、過不足なく存在することで成り立っているという考え方なのです。
五色それぞれの意味
5種類の元素には色と意味が当てはめられています。
•緑(木)=徳を積む、人間力を高める
•赤(火)=父母先祖への感謝の気持ち
•黄(土)=友人知人を大切にする気持ち
•白(金)=義務決まりを守る
•黒(水)=学業向上を願う
七夕でも、それぞれの色の意味に関する願い事を書くと願いが叶いやすいと言われていますよ。
この「全て」を表す五色は魔除けの役割もあり、鯉のぼりの一番上の吹き流しにも使われています。
歌詞全体の意味
たなばたさまは古き良き日本の七夕の夜の情景を歌っています。
「きれい、美しい」などの表現がなくても、笹飾りの横で美しい星空を見上げている子どもの姿が浮かび上がります。
●歌詞の意訳
軒端に飾った笹飾りが夜風に吹かれてサラサラと揺れている。
空を見上げるとお星さまが金銀砂子のようにきらきらしているよ。
私が願い事を書いた五色の短冊をきらきら輝くお星さまが空から見てる。

長く愛される歌詞の秘密
•魅力的な歌詞の秘密
•「七夕」が使われていない
•視野の広がり=想像が膨らむ
•「ご」繋がりで覚えやすい
「七夕」が出てこない
たなばたさまの歌詞には「七夕」という言葉は出てきません。
ストレートな表現を使わず、歌いながら七夕の情景が頭に浮かんでくる歌詞になっています。
七夕に関連するキーワードだけで【きれいな星空が広がる七夕の夜の情景】を想像できるように工夫されているのです。
広がる視野=想像が膨らむ
たなばたさまは【1番=私目線】【2番=お星様目線】の歌詞。
この視野の変化によってイメージが浮かびやすくなっています。
•1番=私が空を見上げている
→子どもたちに共感しながら歌ってほしい。
•2番=星が空から見下ろしている
→身近な世界から一気に視野を広げることで想像を膨らませやすくしている。
「ご」繋がり=覚えやすい
1番の最後、2番の最初の言葉を「ご」にしています。
これは歌詞を思い出しやすくするためです。
1番 きんぎんすなご
2番 ごしきのたんざく
自然なのは「私が書いた五色の短冊」ですが、敢えて「五色の短冊 私が書いた」にされているのです。
この部分に作詞者はかなりこだわりを持っていたそうです。
たなばたさまの由来
•作られた時期
•作詞作曲者について
戦時下にできた歌
七夕の歌「たなばたさま」が発表されたのは1941(昭和16)年、太平洋戦争が始まった年です。
国民学校2年生の教科書「うたのほん 下」に掲載するために作られました。
※国民学校=戦時下の小学校の名称
当初の作者は「なし」
●たなばたさまの作詞作曲者
作詞=権藤はなよ
作曲=下総皖一
現在は作者が明記されていますが、当初は作者の記載はありませんでした。
なぜなら、戦時中に文部省によって題材指定の上で作られた歌は全て【作者非公表】だったから。
この歌は戦後も多くの教科書に掲載。
1953(昭和28)年発表の「一ねんせいのおんがく」からは、正しい作者が表記されることが増えていきました。
作詞の部分に「補作:林柳波」がついていることもあります。
どこをどう補作したのかは不明。
少し手を加えたと林柳波さんの家族が証言しています。
ちなみに1951(昭和26)年に出版された教科書には林柳波さんが変更した歌詞が掲載されたことがあります。
●林柳波が変更した歌詞
ごしきのたんざく→きれいないろがみ
「ご」繋がりの重要性には気がつかなかったようです。
七夕にまつわる疑問を解決
•七夕に願い事をする理由
•星に願うのはなぜか
•なぜ「笹」に飾るのか
七夕に願い事をする理由
七夕の起源は中国の風習「乞巧奠(きこうでん)」です。
●乞巧奠
機織りが上手な織姫にあやかり、裁縫の上達を祈る行事
これが日本に伝わり、江戸時代に寺子屋の子どもたちが、5色の短冊に読み書き上達の願い事を書く行事になりました。
元々七夕の短冊に書く願い事は何かの上達を願うもの。
「〇〇がほしい」より「〇〇ができるようになりますように」の方が叶いやすいと言われています。

星に願う理由
七夕は星に願うのが当たり前になっていますが、この星とは「織姫=琴座のベガ」のこと。
元々七夕は織姫に裁縫の上達を願う行事。
つまりお願い事をする先は「裁縫が得意な織姫」でした。
そして織姫を表す星がはっきり見える日=七夕です。
夏の星座を探す際の目印となる「夏の大三角形」は七夕伝説の登場人物で形成されています。
●夏の大三角形
•織姫=琴座のベガ
•彦星=鷲座のアルタイル
•かささぎ=はくちょう座のデネブ
この星たちが最もよく見える日に、願い事をするようになったのです。

●七夕伝説
=七夕=織姫と彦星が年に一度会える日
織姫は神様が着る着物を一生懸命に織る働き者でした。
神様は働いてばかりいる織姫を心配し、同じく真面目に働く牛飼いの彦星と結婚させてあげることにしました。
しかし、2人は結婚すると働かず毎日遊んでばかり。
怒った神様が2人を引き離しましたが、かわいそうなので年に一度だけ会うことを許しました。
2人の再会は毎年かささぎが手助けしていると言われています。

笹=神聖なもの•魔除け
笹は古来から【神聖なもの・魔除け】として扱われてきました。
笹の葉は殺菌効果があり食べ物を腐りにくくします。
そのため、お供え物を載せるものとして神聖な場で使われてきました。
さらに、生命力も強く縁起が良いです。
神聖&縁起が良い笹にあやかり、願い事を吊るすようになったのです。
七夕の歌=七夕を表す言葉がたくさん
•たなばたさまは日本の古き良き七夕の情景を歌っている。
•軒端、金銀砂子、五色の短冊は七夕を連想させるキーワード。
•たなばたさまの歌詞には人を惹きつける工夫がたくさん。
•たなばたさまの作詞作曲者の変遷は複雑。
•七夕に星にお願い事をするのは、織姫と彦星の伝説が元になっているから。
たなばたさまは「きれい」などの表現を使わず、きれいな七夕の情景が頭に浮かぶように作られています。
笹の葉の音の「サラサラ」という表現が静かな夜を連想させてくれ、とても情緒的です。
七夕にはみんなでこの歌を歌って、きれいな七夕の夜を過ごしたいですね。