多くの人がアルファベットを覚えるのに歌ったことがあるABCの歌。
この歌の区切り方、実は今と昔で違います。
この記事でわかること・ABCの歌の今の区切り方
・昔の区切りが定着してた理由
・LMNOPを早く歌う理由
・ABCの歌の由来
区切り=LMNOPまで一気が一般的に
ABCの歌はきらきら星のメロディーにアルファベットをのせたもの。
数年前から変わったと言われる区切りについてみていきましょう。
昔の歌い方=日本版
以前日本でよく歌われていたABCの歌はLMNがゆっくり歌われていました。
※きらきら星の歌詞に当てはめて書き出してみます
A-B-C-D-E-F-G, (きらきらひかる)
H-I-J-K-L-M-N, (おそらのほしよ)
O-P-Q-R-S-T-U,(まばたきしては)
V-W (and) -XYZ,(みんなをみてる)
A-B-C-D-E-F-G, (きらきらひかる)
H-I-J-K-L-M-N, (おそらのほしよ)
注目すべきは赤字の2つ目の区切り「N」の部分。
実はこの区切り方は日本版にアレンジされたもの。
英語が母国語の国はもちろん、その他の国でもこの歌い方はしません。



今の歌い方=アメリカ版
アメリカ版と言われる、海外で一般的な歌い方はLMNOPが速くなります。
そして最後が英語の文章です。
A-B-C-D-E-F-G,
H-I-J-K-LMNOP,
Q-R-S,T-U-V,
W-X,Y(and)-Z,
※Now I know my ABCs,
(さあABCをすべて覚えたよ)
next time won’t you sing with me ?
(次は君も一緒に歌わない?)
アメリカ版と言われるこの区切り方が世界的に一般的。
日本でも近年は正しい英語習得のためにこちらが主流になっています。
ちなみに※の最後の英文の部分はいろいろな歌詞が存在。
無数に存在するのでは、と思うほどたくさんあるので、一部を紹介します。
Now I know my ABCs,
Tell me what you think of me.
Now I know my ABCs,
Won’t you come and sing with me?
Now I know my ABCs,
Don’t you come to play with me?
Now I know my ABCs,
Next time I will sing heavenly.
Happy happy shall we be
when we learn our ABCs.
Happy happy now you see
I can sing my ABC.
など
20年程前からアメリカ版が一般的に
いつからABCの歌の区切りは変わったのか。
それははっきりとはわかりません。
西暦2000年前後からだんだんとアメリカ版が使われることが増えたと言われています。
テレビやおもちゃなどもだんだんシフトしていきました。
だんだんと変化しているので、50年前でも「LMNOP」と区切っていた人もいます。
逆に今でも「LMN」と区切ることもあるようです。
ネイティブ英語習得のための変化
この変化の背景に英語教育の力の入れ方の変化があります。
近年、日本でも英語教育が小学校、やそれ以前から取り入れられるなど
小さい頃からネイティブ英語に親しむことが重要視されるようになりました。
ABCの歌は小さい子どもが歌うことが多い歌。
ネイティブの歌い方を採用し、正しい発音の歌い方を覚えた方が良いということになったのです。


日本版アレンジが生まれた理由
なぜ日本独自の歌い方が生まれたのか。
それは日本人には「LMNOP」は、発音も聞き取りもしにくいからだと言われています。
日本人には歌いにくい
日本語の特性からLMNは発音しにくく、歌いにくいと言われています。
日本語の発音は基本的に母音終わり。
しかし英語には子音で終わる発音が多く存在。
この歌詞の「LMN」もその一つです。
L | M | N | |
日本語発音 | e-ru | e-mu | e-nu |
英語発音 | e-l | e-m | e-n |
この通り、LMNに母音の発音の必要はありません。
しかし日本人の多くは、日本語の特性から「エル」「エム」「エヌ」と発音したくなってしまいます。
この部分をはっきり母音まで発音しようとするとかなり歌いにくいですよね。
そこで、LMNをゆったりと歌う日本版が生まれたのです。
聞き取りにくて覚えられない
英語では、子音終わりの発音の時に「リンクさせる」特性があります。
これがLNMOPの聞き取りを難しくしています。
リンクとは次の音の母音と繋げて流れるように発音する方法。
ex. LMNOP → el-em-en-o-p → elemenop → エレメノピー
英語を話せない日本人がこれを聞いても何を言っているのかわかりません。
聞いて簡単に覚えられる歌にしよう
これも日本流が生まれた理由の一つです。
上手に歌うには「エレメノピー」LMNOPの部分を上手に歌うには、前述のリンクを使いましょう。
子音と次の母音をくっつけるととても歌いやすいです。
el-em-en-o-p = エレメノピー

LMNOPを走るように歌う理由
LMNの発音が子音で終わっていてもLMNをゆっくり歌うことはできるはず。
この部分を走るように歌うことで、音として覚えやすくするという狙いが隠されています。
韻を踏むため
なぜこの部分だけこんなに詰め込んだ歌詞になっているのか。
それはメロディーの区切りの部分で韻を踏む為です。
区切りの赤字の部分に注目してみてください。
A-B-C-D-E-F-G,
H-I-J-K-LMNOP,
Q-R-S,T-U-V,
W-X,Y(and)-Z,
※Now I know my ABCs,
next time won’t you sing with me ?
ABCs以外の区切りは全て「イー」という音で終わっています。
韻を踏むことで曲がリズミカルになり、頭にも残りやすく覚えやすくなります。
韻をふむというのはABCを覚えるための歌として、外せないポイントです。
豆知識●イギリス英語ではZはどうする
Zの発音はイギリスなどでは「zed」。
この発音だと韻が踏めなくなります。
どのように歌っているのでしょうか。
●答え
①アメリカ版を歌っている
②zedと歌っている(韻を踏むとか考えない)
zedと発音している地域では「どっちでもいいや」という感覚のよう。
ABCの歌の由来
世界で広く親しまれているABCの歌はどこで生まれ、いつ日本に伝わったのでしょうか。
おそらくアメリカ発祥
ABCの歌は英語では「The A.B.C」と言います。
アルファベットの歌、「Alphabet song」と呼ばれることも。
世界的に有名な童謡「きらきら星」のメロディーにアルファベットを当てはめた、言わば替え歌です。
口伝えで広まっていったもので、いつどこで生まれたものかははっきりとはしません。
1835年にアメリカボストンで初めて楽譜化されました。
豆知識●きらきら星ももはや替え歌
きらきら星は英米でマザーグースと言われるイギリス伝承の童謡。
しかし実は「きらきら星」の原曲は、1700年代後半に作曲されたフランスのシャンソン。
タイトルも「あのねママ聞いてよ」という全く違うものでした。
この曲にはモーツァルトも関心を示し、1778年に「きらきら星変奏曲」が作られました。
意外にも、童謡「きらきら星」の歌詞がつけられたのはその後のことです。
日本には江戸末期に伝わる
日本にABCの歌が伝わったのは江戸末期。
1859年に、ジョン万次郎が日本最初の本格的な英会話書「英米対話捷径(しょうけい)」を発表。
その中で子どもたちが英語を学ぶのに歌っている歌として紹介しました。
本で紹介したので、ジョン万次郎が「LMN」「LMNOP」どちらの区切りで伝えたのかはよくわかりません。
ABCの歌を伝えたジョン万次郎
ジョン万次郎は初めてアメリカ本土に足を踏み入れた日本人として知られます。
鎖国中だった日本に、アメリカの本物の英語を持ち帰り、広めた人です。
ジョン万次郎は江戸末期1841年、14歳の時に漁の最中に船の転覆事故に遭い、無人島に漂流。
その時運よくアメリカの捕鯨船に助けられました。
船長に気に入られ、アメリカ本土に一緒についていくことに。
とても優秀な少年で、アメリカで英語や航海術などを積極的に学び10年後に帰国。
その後福沢諭吉に英語を教え、勝海舟や福沢諭吉がアメリカに渡った際に通訳として同行するなど
英語が話せる日本人として大いに活躍したのです。
他の歌の豆知識もチェック
当ブログでは他の歌の歌詞の意味や豆知識についてもまとめています。
・童謡
・海外の童謡
・子ども番組の歌
・ディズニー
よく考えると意味がわからない歌の歌詞、昔と今で歌詞が変わっている歌などさまざまな歌詞についてご紹介。
読んでみると「なるほど」「へ〜」と思うことがあると思います。
ぜひチェックしてみてくださいね。
●童謡
・ぞうさんの歌詞の意味を解説|実は個性の素晴らしさを伝える歌
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・こいのぼりの歌詞には2番や3番がある|色々なパターンを紹介
・かたつむりの歌詞の意味|ツノとヤリの意味には2つの説がある
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●ディズニー
・ジッパディードゥーダーは歌詞の差別隠蔽が問題視され削除が進んでいる

私自身が気になった歌詞についてまとめています!
知らなかったことがたくさんで、歌の世界は面白いなと感じます。
LMNOP(エレメノピー)と歌うのが本物
この記事のまとめ・ABCの歌の区切りは20年程前から「LMN」から「LMNOP」が一般的に
・LMN=日本版、LMNOP=アメリカ版で世界で歌われている
・変化の理由はネイティブ英語教育の普及
・日本版は日本人が覚えやすいように生まれた
・LMNOPを走るように歌う理由は韻をふむため
・ABCの歌は江戸末期にジョン万次郎により伝えられた
だんだんとネイティブ英語のABCの歌の区切りにシフトしたこの歌。
アメリカ版がますます主流になっていくでしょう。
「親子で歌い方が違う!」「おもちゃによって違う!」
など違いに戸惑った場合は「LMNOP(エレメノピー)」で統一しましょう。